ゴム屋の学び直しコラム

ゴム屋の学び直しコラム

目次

 1.ゴムって何??
    ・そもそもゴムとは何なのか?
    ・高分子物質とは?
    ・ゴム弾性とは?
    ・ゴムの特徴とは?
 2.加硫成形って何??
    ・加硫成形とは?
    ・プレス成形とは?
    ・焼付成形とは?
 3.HNBRとは? 
 4.FKMとは?

1. ゴムって何??

そもそもゴムとは何なのか?

ゴム用語辞典によれば、「ゴム」とは「常温でゴム弾性を有する高分子物質あるいはその材料(生ゴム)を指す」と定義されています
まず、ゴムの特徴について考える前にこの定義について、簡潔に図解していこうとおもいます。この定義を理解し、高分子、ゴム弾性を理解することが、ゴム理解への第一歩です

高分子物質とは?

高分子とは多数の同一構造の繰り返しからなり、大きな分子量を持つ分子のことで。これは一般的にポリマーとも呼ばれていて、ゴムの設計、配合には欠かせないものになっています。このポリマーは、原料(モノマー)を重合(化学反応)させることにより合成されます。また複数のモノマーを重合させることも可能であり、これを共重合ともいい、この反応により合成ゴムが生まれます。一般的にこのモノマーが何個結合すればポリマーになるかは定められていません

ゴム弾性とは?

ゴム弾性の定義として、「小さな外力で変形しやすく、高伸張性を示し、外力を取り除くと短時間でほぼ元の形に回復する性質」とされています。これをわかりやすく図解すると、次のようになります。
これはゴム特有の性質であり、金属や樹脂などとははっきりと異なる点でもあります。この小さな力で変形しやすく、高伸張性を示すのは、ゴムが長い分子でできていることに起因します。糸を例に考えてみると…
この絡み合った分子は非常に長いため、いたるところで分子内回転が容易に応じ、記述したような変形しやすい性質を持つことになります。
また、ゴムにとって糸状の状態が安定した状態であり、外力を加え引き延ばした「線上」の状態は不安定な状態にあるため、この外力を取り除いた時、ゴムは元に戻ろうと力を発揮します。この伸縮の時に分子同士が衝突し、摩擦が発生し、ひずみが起こります。このひずみ発生時の応力によって振動を吸収、発散でき、タイヤや防振材などのあらゆるゴム製品へ転用されています。

ゴムの特徴とは?

ここまで、なぜゴムは特殊な性質を持つのかについて見てきました。
次に紹介するのは、そのゴムについての具体的な特徴についてです。
ゴムと聞いて多くの人が真っ先に頭に思い浮かぶものがそのゴム弾性だとおもいます。このゴム弾性については前述の「ゴム弾性とは」で語った通り、伸ばしても元に戻ろうとする伸縮性のことです。また加工のしやすさもゴムの特徴の一つであり、鉄を加工するには、一般的に約1500度以上の温度を加え加工する必要があるのに対し、ゴムの場合一般的に170度~200度ほどの温度しか加工に必要とせずどんな形にでも加工が可能です。
このゴム弾性や加工性の良さの他に、耐熱性や耐油性、耐候性などの様々な耐性を、ゴムの種類や配合、加工方法を変えるだけで実現できるのがゴム最大の強みであると言えます。
また、ゴムといえば、電気絶縁性を思い浮かべる人も多いとおもいますが、この電気絶縁性も配合によっては導電性を持たせることも可能なのです。
 
ここまでゴムの優れたところを見てきましたが、もちろんゴムには弱点もあります。
一つは、ゴムは自然劣化するというところです。ゴムの分子は常に分子運動しているため、何もしなくても自然と劣化が進んでしまいます。たとえば、「掃除をしているときにたまたま出てきた輪ゴムがボロボロになって見つかる」ということを誰しも一度は経験したことがあると思います。この劣化は配合によって伸ばすこともできますが、まったく劣化をしないゴムを作ることは不可能であると言われています。
二つ目は、一度成形してしまうと再利用が難しいことです。鉄などの金属と違って一度成形した製品を再度過熱して別のものに作り替えるということがゴムにはできません。これは、近年目標とされているサステナブルな社会をゴムが実現するのが難しいと言われている要因でもあります。近年再生ゴムというゴム原材料が開発されていますが、再生されたゴムは元の原材料に比べると、ゴム物性が低下するなどの問題を抱えています

新版ゴム技術の基礎改訂版、CERI Japan、より引用

2. 加硫成形って何?

加硫成形とは?

ゴム化学において最も重要な架橋反応は硫黄架橋であると言われています。この架橋はゴムの分野では加硫とも言い換えられます。
ゴム加硫の歴史は古く、1839年のアメリカでグッドイヤーという人物によって発見されました。現在でもタイヤメーカーの最大手として知られているグッドイヤー社もこの名にちなんで命名されたという背景があります。この天然ゴムに硫黄を混合し、加熱すると優れたゴム弾性体が得られたという歴史的発見によって、現在も硫黄による架橋反応が主流として用いられてます
 
また、高分子化学の著しい発展とともに、現在では様々な架橋反応が使用されるようになってきています。その一つにパーオキサイド架橋というものがありますこのパーオキサイド架橋が従来の硫黄加硫と違う点は、硫黄加硫の場合、二重結合を有しているジエン系ゴムに限られるのに対して、パーオキサイド架橋は飽和ゴムにも適用できる点が挙げられます。飽和ゴムとして使われているものは主に、エチレンプロピレンゴムやシリコンゴム、フッ素ゴム、HNBRなどです。
 
そのためパーオキサイド架橋メリットとして、
 
飽和ゴムとの相性が良い
耐熱性や強度で硫黄架橋より優れる
電気絶縁性に優れる
焼け(スコーチ)の危険性が少ない
硫黄による金属に対する腐食の心配がない。
 
などの点が挙げられます。
 
 新版ゴム技術の基礎改訂版、CERI Japan、より引用

プレス成形とは?

プレス成形とは主に金型を使った成型方法のことをさします。プレス成形にはそれぞれ、直圧式成形注入式成形の二通りがあります。製品形状や求められる精度、コスト面などにおいて、それぞれメリット、デメリットを抱えています。どちらを選択するかは、その時その時の案件の内容によって考慮します。
 
初めに直圧式成形についてご紹介しますこの直圧式成形は最も一般的な加硫成形方法です。特徴として金型の取り数は一個取りから数十個までと幅広く対応できます。また、生産数を増やしたい場合や、製品価格を下げる為に金型の取り数を増やすことも可能ですが、その分型が大きくなった場合は型費用が増えてしまいます

メリット
 
小ロット、多品種など比較的柔軟な対応が可能
金型代が射出成型やトランスファー成形に比べて金型費用を抑えることができる。
トランスファー成形に比べてバリが少ない。
 
デメリット
 
職人の技量と金型の精度によって、製品の歩留まりや生産性が変わってくる
材料を細かく裁断、計量する必要がある。
 

続いて注入式成形についてご紹介します。トランスファー成形とは、前述した圧縮成形とは違い、材料をポット内に置きプランジャで加圧することで、注入ゲートを通り製品の形に加工されるという方法です特徴として、直圧式成形と比べ、金型枚数が増え金型の形状も複雑になりますが、職人の技量にはあまり依存しない

メリット


直圧式成形と比べ、材料を細かく裁断、計量する必要がない。
金型が閉じた状態により必要な材料を流し込むので安定した製品精度が見込まれる。
 

デメリット


直圧式成形と比べ、金型が複雑かつ枚数が多くなるため、費用が高くなるためコスト面では不利になる。
ポット部分や注入ゲート部分にバリが残ってしまうため、使用材料も増え、材料コストが上がってしまう。
製品面に注入ゲート跡が残ってしまう。

焼付成形とは?

焼付成形とは、鉄やアルミ、ステンレス等の金属とゴムを焼付成形するものです。

 

通常、成型後のゴムと金属との接着は、接着力の弱さが懸念されます。

また、接着してしばらくの間はしっかりついていたのに、しばらくすると接着がはがれてしまうという問題も・・・

 

そこで弊社がお客様に提案させていただくのがゴムと金属を一度に同じ金型で加工する焼付成形(インサート成形ともいう)と呼ばれる加工方法です。

この方法では、あらかじめ接着剤を塗布した金属と未加硫のゴムを金型に入れ、加硫と接着を同時に反応させ加工します。

 

弊社では、一般的に接着の難しいと言われているゴム(フッ素ゴムなど)でも、弊社独自の加工方法や、材料ごとに選ばれた接着剤によって可能にしています。

そのため、お客様のニーズにあった加工方法をご提案させていただきます。

 

まずは、お気軽にご相談お待ちしております。